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リビングからダイニング・キッチン方向を見たところ。GRAHAM SOFAが空間に
馴染んでいます。背後のダイニングテーブルは岡村さん設計のオリジナルです。

おじゃまします! お宅訪問レポート エコBeautifulなお宅訪問

日差しや風を上手に生かす
楽しみながら節約できる家

神奈川県の大磯にある閑静な住宅街に岡村さんの家は建っています。後ろには山を従え、前には海を臨む自然に恵まれた敷地です。この敷地の力をフルに活用した、親子4人で暮らすコンパクトな住まいを紹介します。

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配ぜんは子どもたちもお手伝い。大きなテーブルなので片側に3人座れます。

景観への配慮

岡村さんは数年前から、賃貸住宅を借りてこの地域で暮らしていました。このあたりの自然に恵まれ、静かな環境が気に入り、この近くで家を建てたいと考えるようになりました。今の土地は、土地探しをはじめて3年目に出 会いました。決め手は、緑が多いことと、ほどよい海との距離でした。あまり海から近いと塩によって家が傷みやすいので、その点でも今の場所は好都合でした。岡村さんの仕事は建築の設計で、神奈川県の富士ソーラーハウスの設計を手がけています。そこで、自宅の建設も同社に依頼することにしました。

家づくりに際して、岡村さんがこだわったのが周囲の景観に馴染むことでした。そのために屋根の勾配を山の斜面方向に下し、外壁や屋根、樋(とい)は周囲の緑に馴染む濃茶のガルバリウム鋼板にしました。そして、外壁を覆う目透し塀やバルコニー手摺(てすり)には、自然系塗料で仕上げた「木もちEデッキ材」という国産のスギを使いました。これは景観上の配慮とともに、日本の山の木を使うという思いも込められています。

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南東に向いた主窓からはきれいな山の景色が見えます。

日本の山の木を使う

間取りは1階に寝室や子ども部屋、2階にLDKをもってきた逆転プランを採用しました。2階は大らかなワンルームプランとなっていて、畳コーナーを小上がりとして設けています。畳コーナーの上は梁材があらわしになっていて、チェアハンモックをかけられるようになっています。

構造材はすべて国産材です。これはデッキ材と同じく、日本の山の木を使うことで日本の林業にお金が回るようにし、植林や間伐が行えるようにという配慮です。適切な伐採サイクルで管理された山林は二酸化炭素の吸収効果が高く、地球温暖化防止に貢献します。また、治水効果や水質浄化機能なども併せ持ちます。同様にほとんどの床には、国産のカラマツフローリングを使っています。堅すぎず、柔らかすぎず、使い心地はなかなかよいそうです。

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2階のリビングダイニング。ワンルーム的な空間になっています。
リビングの一角に畳スペースが設けられています。

パッシブデザインで省エネ

この家の大きな特徴の1つが、2階とロフトの床の一部が「すのこ」になっていることです。こうすることで、家全体を1つの空間としてつながるので、空気がよどむところがなく、常に新鮮な状態が保てるのです。また、家全体がつながっていることで、夏場に暑い空気をトップライトなどから抜くのにも役に立っています。こうした工夫により、岡村さんの家は風が常に抜け、真夏でもエアコンを使う時間はとても短く済んでいます。

夏でも涼しい理由は、ほかにもあります。断熱です。岡村さんの家は、国の定めた断熱基準を超える性能なので、屋根や壁から熱が伝わりにくいのです。さらに日射遮蔽(にっしゃしゃへい)です。南側の大きな窓には夏の間は葦簀(よしず)をつり下げ、西側の窓にはオーニングを設けて日差しをしっかりカットしています。

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    夏の間はベランダには葦簀(よしず)をかけて、日射が入らないようにしています。

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    オーニングは低い位置からの日射遮蔽にはとても有効です。

こうした太陽や風と上手に付き合う建物の工夫を「パッシブデザイン」といいます。パッシブデザインは、住まい手が天候などを気にしながら積極的に自然の力を取り入れることで、お金をかけずに大きな効果を上げることができます。実際、岡村さんの家では、夏場の電気代は月あたり約6,000円、春秋の中間期では約3,000円で済んでいます。パッシブデザインの活用に加えて、照明をLEDにしていることも大きいそうです。給湯も電気で賄っていることを考えると、かなり節約できているといえます。

太陽熱を最大限に生かす

また、岡村さんの家では、空気集熱式ソーラーというシステムを入れています。これは太陽の熱で暖められた空気を屋根から取り入れ、いったん床下に送り込んで基礎に熱を蓄え、同時に1階の床に設けたガラリを通じて暖かい空気を家全体に行き渡らせる仕組みです。

晩秋や冬の季節にはこのシステムが大活躍します。屋根から取り入れる空気の温度は、天気がいいと60度近くになります。そうした暖かい空気を日中の間、大量に取り入れることで、家のなか全体が気持ちのよい暖かさに包まれます。ちなみに冬場の電気代も夏場と同様に6000円程度で済んでいます。空気集熱式ソーラーが大いに貢献していることは間違いありません。

このほか資源を無駄なく使う工夫として、浴槽から洗濯用のお湯を取り入れる「ノコリーユECO」という設備を使っています。操作感もよいので、毎日使っているそうです。また、雨水利用も行っており、こちらは植栽やミニ菜園の水やりに使っています。

住む人がアクティブに動くことで、楽しみながらエネルギーが節約できる家。岡村さんの家はこれからのエコ住宅のあり方を示しているように思います。

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    洗濯用水は、お風呂の残り湯を使用しています。浴槽から洗濯用のお湯を取り入れる「ノコリーユECO」を取り付けています。

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    雨水を貯めておくタンク。家庭菜園などの水やりに使っています。

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岡村さんの家の外観。斜面地の中腹にあります。

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キッチンとダイニングの間にカウンターの付いた収納を設けています。収納の扉に用いた型板ガラスや壁に貼ったコルクボードがおしゃれです。

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キッチンスペースは細部の工夫が満載。背後の作業台の高さを抑えることで、捏(こ)ねる作業や子どもの手伝いをしやすくしています。

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キッチン脇に設けたワークスペース。この場所があることでLDKが散らからないそうです。

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1階の子ども部屋。上下階の境がすのこになっているので、縄梯子(なわばしご)で上り下りできます。

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広いロフトは、寝室として使われています。北側の屋根に採光を補うトップライトがついている。ダクトは空気集熱式ソーラーのパーツです。

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床の一部に設けたすのこを通じて、空気が自然に流れます。また、上下階の様子が分かるようになっています。

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エアコンの冷気が下の階に逃げないように、階段前に設けられた扉。ちょっとしたことですが、とても効果があります。

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仕事をもちながらもお子さんとのコミュニケーションはしっかりとっています。このお母さん目線が設計にもいかされています。

岡村邸 DATA

家族構成 夫婦、子ども2人 敷地面積 133.89㎡(40.5坪) 延床面積 99.38㎡ 1階/49.69㎡ 2階/49.69㎡
構造・工法 木造軸組工法

■この家を建てた工務店

富士ソーラーハウス

神奈川県横浜市青葉区しらとり台2-9
グレイスビル 1F
TEL 045-988-1231

http://www.fsh.co.jp/

神奈川県・横浜市にある、エコ住宅で実績のある工務店です。エネルギーや自然素材に関する知識や経験が豊富です。長期優良住宅※の先導的モデル・普及モデルにも意欲的に取り組んでいます。太陽や風の流れを読み込み、大工の手わざを生かしたシンプルで居心地よい空間づくりには定評があります。

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設計者らしいトータルな視点で、建て主の優先順位を整理して、本当に実現したいことをかたちにします。

■この工務店の女性スタッフ

岡村 未来子さん(おかむら みきこ)


岡村さんは、大学で建築を学び、そのまま大手ゼネコンに就職しました。「家が好きだった」という岡村さんは、ゼネコンのなかでも、住宅を建設する部署に配属され、そこで12年間働きました。一般にゼネコンは大きな建物を得意とする建設会社なので、こうしたキャリアは比較的珍しいといえます。大手ゼネコンに家づくりを依頼するだけあって、クライアントは個性が強い方が多く、また大きな予算を預かる現場もあり、学ぶところが多かったといいます。岡村さんは、子育てのことなど思うところがあり、2008年にゼネコンを退社。ただ、ゼネコンを退社した後も住宅の仕事を続けたいと考えていました。

そんな岡村さんの転機になったのが、2009年に行われた建築家・伊礼智氏による設計セミナー。このセミナーで伊礼氏の指導を受けて、木造住宅の設計に開眼。そのセミナーで知り合った富士ソーラーハウスの仕事を行うようになりました。「工務店の家のいいところは、現場からトータルで関われるところ」と岡村さんは言います。現場を知ることで、岡村さんの設計力には、より磨きが掛かっていき、気がついたら富士ソーラーハウスに欠かせない人気設計者になっていました。

現在、岡村さんの設計する家は、おしゃれで使いやすくて光熱費がかからないと大好評です。変化に富んだ空間づくりと、暮らしの利便性を向上させるための工夫が上手に同居しているのです。また、お母さん目線のプランや設えの配慮なども評価が高いところです。

今後の取り組みについて、「エネルギーに関心がある」と岡村さんは言います。これまで取り組んできたパッシブデザインに磨きをかけるとともに、「太陽光発電などの設備も上手に取り入れたい」と考えているそうです。これからの活動も楽しみです。

※長期にわたって使用可能な質の高い住宅ストックの形成をめざした制度です。構造及び設備等について、一定の基準が設けられ、この基準を満たすものを「長期優良住宅」として認定し、認定を取得した住宅は、さまざまな税制優遇が適用されます。

取材日:2012年7月18日

Text:大菅 力/Photo:廣瀬 育子

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